移 動 量
移動量とは、板金を曲げた場合、曲げ部は薄くなり、曲げ内Rが板厚の5倍以下のとき( 中立線から外側は
伸長され、内側は圧縮される )に生じその材料の持つ中立線の位置や長さの変位量(ヒズミ量)のことです。

このホームページに云う、移動量に関する伸び量や縮み量(伸長、圧縮)の表現は、設計図面の展開計算を
行う場合に、中立線の長さ(展開長)もとめる場合の外寸や内寸から視た中立線の長さ(展開長)の関係です。


下記の詳細図では
赤色の2点鎖線の長さ(中立線)を加算したものが、展開長です。
(曲げ角度が深くなるに従って、中心部の中立線(A)が、内側(パンチ側)に移動します。)


曲げ詳細図

この移動量は外寸が伸び量に、内寸が縮み量に相対し、曲げ角度によりその量も違い、さらに正と負にわかれます。

90゚曲げ移動量の計算について

曲げる前の平板の板金は、応力が無いので、板金の長さがそのまま展開長となります。
90゚に曲げると、外寸と内寸が容易にハイトゲージや、ノギスで計測できます。
伸び量=2辺の外寸の長さから、曲げる前の板金の長さを減算した長さを云います。
      従って、外寸展開長は、図面外寸法から伸び量(正数表示)を減算します。
縮み量=2辺の内寸の長さから、曲げる前の板金の長さを減算した長さを云います。
      従って、内寸展開長は、図面内寸法から縮み量(負数表示)を正数として、加算します。

 注意、鋭角曲げで内Rが大きい場合、縮み量が正数表示(図面内寸>展開長)されるので、減算します。
    表示例 曲げデータ計算機  0゚<θ<180゚

移動量(伸び量、縮み量)のイメージ
加工前の板金(展開長=90)

説明
伸び量の計算 
@ 加工後の2辺外寸の和 50+50=100 
A 加工前の板金の長さ=展開長=90 
@ - A=10(2辺の和)が伸び量になります。
 

縮み量の計算
@ 加工後の2辺内寸の和 44+44=88 
A 加工前の板金の長さ=90 
@ - A= - 2(2辺の和)が縮み量になります。

展開長の計算
図面が外寸の場合
外寸から伸び量(正数表示)を減算します
50-10/2=45*2=90となります。


図面が内寸の場合

内寸から縮み量(負数表示)を正数として、加算します。
44+2/2=45*2=90


参考
(90゜曲げの場合)
    
材料別移動量をご覧ください。

加工中の板金


加工後の板金
中立線の長さは、曲げ条件により変化するので、曲げた後の外寸や内寸から結果として計算されます。
従って、展開長を決める場合は、設計図面寸法に結果として計算された経験値
伸び量、縮み量、係数など)を加、減、積、
除算します。
90゚曲げの移動量についてデータは充足していますが、0゚<θ90゚の範囲で、中立線を求める根拠が明確な著書、研究、学説が
僅少です。
参考資料 曲げ部と移動量
       下記の写真は、SUS310 9T を 0.2Rパンチ V50 で曲げたものです
さらに詳しく知りたい方は
関連サイト
のリンク板金技能講座 第10回の問題15の解説にRomanwskiの中立面の移動係数がありますのでご覧ください。
            板金技能講座、現在非公開のようです
Ai-Link現在、技術講座にリンク先がありません)
http://www.ai-link.ne.jp/free/technical/bend/2_2.html
 に
中立面とその移動の掲載があります。

別添の
材料別移動量のとおり、板厚が同じでもダイ、パンチが変われば、移動量も変わります。
また、何をもって標準というか?の定義も定かではありません。
一般的に、標準とは、ダイ幅について、、3.2t以下は6倍、以上の板厚は8倍以上と云われています。
パンチRは、設計意図による場合が多く、割れ、ひずみ、強度、美観などの面から、板厚Rや最少曲げRの指定が多いようです。


移動量(伸び量)の計算事例 (参考  材料別移動量 )
上記の曲げ詳細図は、90゚曲げの断面図を示したものですが下記材料別移動量の標準金型使用の90゚曲げの移動量算出は経験値
として、板厚*0.85の係数を使用しています。   
(板厚*0.85の係数……これは、根拠が無く、経験値になります。)
板厚4.5T、V25≒4.5T*6(板厚の6倍)、最少曲げRの定義の場合
4.5*085≒3.8になります。   2辺*3.8≒7.6が移動量(伸び量)になります。( これは、近似値の計算方法です。)
さらに環境の変化 ( パンチRやダイV幅の変更 )にともなう移動量の明確な根拠や算出方法など、一般に公開され広く実用に至って
いるものは見当たりません。
このため、角度曲げについては経験測や実験値に頼らざるを得ないのが現状です。
また、これまで、角度曲げの寸法検査の実証方法とその根拠に不明確さを否めませんでした。
特に、複数の角度曲げの場合、図面の展開や曲げ作業で正確な移動量の把握が必要なため、多くの労力が費やされ、労働生産性を
著しく低下させているのが現状です。
参考 材料別移動量と計算事例との比較                                          (参考  材料別移動量 )
板  厚 1 1.2 1.6 2 2.3 2.6 3 3.2 4.5 6 6
ダ イ 幅 6 8 10 12 14 16 18 20 25 40 32
実 績 値 1.7 2.0 2.7 3.4 4 4.5 5.2 5.5 7.5 10.6 10
板厚*0.85*2 1.7 2.04 2.72 3.4 3.91 4.42 5.1 5.44 7.65 10.2 10.2

左記のグラフの経験値は、単純に 板厚*0.85*2で、計算したものです。
板厚とダイ幅は、板厚*≒6の関係になっています。
グラフで表すと、近似値を示していることが、わかります。

*0.85の根拠の説明はできませんが、結果として近似値が、*0.85となります。
6tは、V40のデータを使用しています。
参考
90゚曲げ以下の移動量
近似移動量の計算    0゚<θ<90゚
近似移動量の検証


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