近似移動量の計算
1 曲げデータの収集
曲げデータ計算機により、曲げた結果寸法から、曲げる前の材料寸法を減じて移動量を求めます。
従って、曲げる条件により、同じ規格の材料を使用しても結果が異なります。
2 曲げデータ計算機 0゚<θ≦90゚
事例は、SPHC 6.0T 90゚ パンチ0.2R ダイ幅32 入力条件から必要なデータを計算します
必 須 入 力 |
板 厚 |
角 度 |
原 寸 法 |
ノ ギス厚 |
6.0 |
90 |
100 |
3.5 |
原寸法とは、曲げる前の板金の長さのことです。
伸び量は減算、縮み量は加算して使用します。
選択入力値に根拠はありません。
A辺とB辺の入力項目はいずれか一箇所です。 |
選 択 入 力 |
入力項目 |
A 辺 |
B 辺 |
高 さ |
|
57.40 |
ノ ギ ス |
|
|
内 寸 |
|
|
外 寸 |
52.60 |
|
|
出 力 デ ー タ |
伸 び 量 |
A辺外寸 |
A辺内寸 |
A辺高さ |
A辺ノギス寸 |
10.00 |
52.60 |
46.60 |
52.60 |
52.60 |
縮 み 量 |
B辺外寸 |
B辺内寸 |
B辺高さ |
B辺ノギス寸 |
-2.00 |
57.40 |
51.40 |
57.40
|
57.40 |
縮み量で、鋭角の場合に、正数で表示された場合は、内寸から負として減算します。
参考 各寸法の測定は、図面と曲げ完成品の寸法検証方法 をごらんください。
上記で求めた角度別の伸び量をを下記の3 移動量集計表 |
A〜10.00 |
に入力します。 |
3 移動量集計表 SPHC 6.0T パンチ0.2R ダイ幅 32
角 度 |
10 |
20 |
30 |
40 |
50 |
60 |
70 |
80 |
90 |
伸び量Y |
A |
B |
C |
D |
E |
F |
G |
H |
10.00 |
角 度 X |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
この表の伸び量Y |
A〜10.00 |
を下記の 4. 回帰曲線入力係数表に入力します。 |
参 考
角度の浅い寸法確認は、内寸をハイトゲージで確認する方法にならざるを得ませんが、どうしても困難な場合は、
30度で確認できた寸法を10度、20度に按分します。
これは、加圧によりパンチの接面が材料に与える影響(縮み量が伸び量に与える影響)が直線に近い計算でも、
近似値に添うと考えられるからです。
30度以下が不要の場合は、この限りではありません。
4 回帰曲線入力係数表
角 度 X |
X^2 |
X^3 |
伸び量Y |
1 |
1 |
1.00 |
A |
2 |
4 |
8.00 |
B |
3 |
9 |
27.00 |
C |
4 |
16 |
64.00 |
D |
5 |
25 |
125.00 |
E |
6 |
36 |
216.00 |
F |
7 |
49 |
343.00 |
G |
8 |
64 |
512.00 |
H |
9 |
81 |
729.00 |
10.000 |
|
この表をツール(T)で回帰分析します。
ここでは最小2乗法により回帰曲線式を求めます。
左記の表は3次回帰式用です。
カーソルで入力範囲をコピーし貼り付けます。 |
5 回帰式について
曲線回帰式の次数の選択
2次回帰式では小数点1位が平均誤差として現れ、3次回帰式では小数点2位になるので製品の寸法公差や数式の入力の
煩雑さから見て3次式を選んでいます。
式は y=ax^3 + bx^2 + cx + d となります.
6 3次回帰式の回帰分析
エクセルの分析ツールの回帰分析ツールを使用して計算します。
分析ツールはツールバーのツ-ル(T)→分析ツール(D)→回帰分析→OK→入力画面が表示されます。
上記の必要データにもとずいて入力元には
角 度 |
X値入力欄 |
|
の範囲を入力します。 |
伸び量Y |
Y値入力欄 |
|
の範囲を入力します。 |
出力オプションは、新規又は次のワークシートを選択します。
OK を押すと自動的に計算されます。
次のシートに概要が表示されますので係数をコピーします。
回帰分析の概要に、この係数が表示されます
|
係 数 |
標準誤差 |
|
切片 |
-J |
0.0123456 |
|
-J |
J〜M は数値になります。
-、+ は入力数値により異なります。 |
X 値 1 |
K |
0.010295429 |
|
K |
X 値 2 |
-L |
0.002330649 |
|
-L |
X 値 3 |
M |
0.000153803 |
|
M |
これは、伸び量の係数になります。
7 3次回帰式 y=ax^3 + bx^2 + cx + d の作成
回帰分析の概要をセル位置で表示します
セル位置 |
B |
C |
4 |
|
係 数 |
5 |
切片 |
-J |
6 |
X 値 1 |
K |
7 |
X 値 2 |
-L |
8 |
X 値 3 |
M |
|
係数を下記の近似移動量の計算式にセルとして代入します.
数値をそのまま代入しても支障ありません。 |
8 近似移動量の計算式の作成
必要項目をセル位置で表示します
セル位置 |
B |
C |
D |
E |
10 |
板 厚 |
角 度 |
伸 び 量 |
縮 み 量 |
11 |
6 |
90 |
10.00 |
-2.00 |
板厚は数式にかえりません。
y=ax^3 + bx^2 + cx + d の回帰式にあてはめます。
伸び量=POWER((C11)/10,3)*C8+POWER((C11)/10,2)*C7+POWER((C11)/10,1)*C6+C5 であらわされます。
縮み量の計算
伸び量-(TAN(曲げ角度/2/180*PI())*板厚)*2 の式になります。 21.26
以上で、角度欄に必要な角度を入力すれば、求める角度の伸び量と縮み量がかえります。 31.93
板 厚 |
角 度 |
伸 び 量 |
縮 み 量 |
6 |
90 |
10.00 |
-2.00 |
事例の数値は、対外的に実証できる根拠はありません。 64.69
数式及び変数の説明
POWER |
累乗した値をかえす関数です。 |
(C11) |
セルの位置でセル位置に入力された角度です。 |
C5:C8 |
4の回帰曲線 変数表のセル位置に入力された変数です。 |
(C11/10)
|
選択角度の 10〜90 に対する x の入力値を 1〜9 に置換したものです。 |
なお、三次式の cx にあたるPOWER((C11)/10,1)はPOWER((C11)/10)で支障ありません。
また、入力間違いを防ぐため、入力規則で必要な制限を設けてください。
追記
近似移動量の計算は、移動量を数学的に捕捉するもので、必ずしも、作業実態と一致したものでないかもしれませんが、
作業現場では、曲げ環境に応じた移動量の把握の一考察になるものと思料されます。
注意
角度は0゚<θ<90°以外入力出来ないよう入力規則で設定しましょう。
セルに入力する場合、隙間を空けずに詰めて入力してください。
隙間を空けるとエラーがでます。
数式の先頭はかならず[ = ]を付けましょう。
数式は拘りません。
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