曲げ部と移動量

平らな板を曲げると、下の図のように板の外側は引っ張られる力が生じ、内側は圧縮される力が生じ、伸び面と縮み面
のあいだで伸び、縮みしない位置があります。  この位置のことを中立線( 点 、面 、軸 )と呼びます。
この線のことは、先述の〃
中立線〃で説明しました

理論的には材料別、板厚別、角度別、曲げR別、V幅別などの環境別に、中立線の位置、長さがわかれば、直線部分に
このR部の中立線の長さを加えれば移動量の算出が可能となります。
需要の少なさからか、正確に曲げ環境を含めた詳細について著述、解析、一般公開されたものは多くありません。

現在の移動量の計算方法は
(1)四分六分法の使用
(2)市販ソフトによるデータの使用
(3)自社データの使用     などがあります。

加工変形部( 曲げ部 )と移動量の図

90゚曲げ移動量(伸び量)の計算 (再掲 参考 、材料別移動量)
ひずむ部分の縮む部分と伸びる部分の割合が曲げ角度により、変化し曲げ角度が深くなるほど、中立線は内側に移動します。
曲げ内Rが板厚の5倍以下の移動量を算出する場合、各社独自の係数を掛けて中立線の長さを算出している所が多いようです。
上記加工変形部の図は、標準金型使用時の90゚曲げの断面図を示したもので、移動量の算出は経験として、板厚*0.85の係数を
使用しています。
( これは、経験値、近似値の計算方法になります。)

事例
板厚1.6T、V10≒1.6T*6(板厚の6倍)、最少曲げRの場合を定義とした場合。
1.6*085≒1.36になります。   2辺*1.36≒2.72が移動量(伸び量)になります。
したがって、上記条件により、板金を50*50*90゚に曲げる場合の展開長は、50+50=100−2.72≒97.28展開長になります。
板厚が同じでもダイ、パンチRが変われば、移動量も変わります。

移動量で実績値と経験値をグラフ比較しています。

角度曲げ移動量のノウハウ
精度の高い製品の製作には、曲げ環境の変化に対応した中立線を測る物差しが無く、端材や曲げ材料を使用して、試し曲げと
称する作業で作業の結果として、移動量を捕捉しているのが、現状です。
この、移動量の捕捉資料の正確さ、多さがその会社の持つノ ウハウになっています。
これが、自社データになります。

伸び量と縮み量は相関しており、グラフ化すると、日常使用しているデータが目視できます。
縮み量が、角度が60度前後位から伸び量に比して減衰しているのは、曲げ角度による板金とパンチとダイの接面の状態にあると
思われます。
特に、使用パンチの先端のR、法面の角度や長さ、ダイの法面の角度やV幅などにより、曲げ角度が深くなるにしたがって内面の
膨らみが大きくなり、パンチの法面を押し、結果外面の伸張に影響を与えると推測できます。

下記の資料のとおり、パンチの先端部の板金の状態は、角度が深くなるにつれて、圧縮される歪として膨らんできます。
曲げ角度が深くなるにしたがって、、膨らみとパンチの法面への圧力が大きくなりパンチの法面を接面として、板金の外面が伸張
されるものと思われます。
さらに深くなってくると、板金の外面がダイの法面へ押し付けられて伸びが大きくなり、相対する縮み量が減少していくと思われます。
このため、曲げ仕様に応じた実作業の中で、曲げ角度<90゚ の正確な角度別のデータを収集して数値、数式などの修正を待つ必要と
更なる違った観点からの移動量の思考が必要と思われます。
これは、私見であって、正確なデータを積み上げた結果に基ずくものではありません。
正確な移動量の算出は、自社の扱う材料と使用金型との組み合わせと長年の実績から生れるものと思います。


資料
下記の写真は、SUS310 9T を 0.2Rパンチ V50 で曲げたものです。

参考事例 (参考 材料別移動量)
A、B、Cは一般に公開されている資料に基ずくものです
3.0t をV18で曲げた場合の事例です。
90゚は寸法確認が容易なので、3件とも同等値になっています。
Cは30゚以下のデータがありません。
伸び量は、計算結果、あるいは片伸び値を使用しています。
伸び量から縮み量の換算は
移動量計算機を使用しました。
X 軸が角度  Y 軸が移動量になります。

伸び量 縮み量


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