曲げ作業の総括


移動量の把握実態
 
移動量とは、板金を曲げた場合、曲げ内Rが板厚の5倍以下のときに(中立線より外側は伸長し、内側は圧縮される力が生じる )、中立線は板厚の中心より内側に移動するその材料の持つ中立線の位置や長さの変位量=ヒズミ量( 設計寸法と展開長の誤差)のことを移動量といいます。
移動量は外寸が伸び量に、内寸が縮み量に相対し、その量も違い、さらに正と負にわかれます。

移動量は、同一材料を同一条件下において曲げれば、算出方法が相違しても、同一の値を示さなければなりません。
現在、θ=90゚ 曲げの移動量についてデータは充足していますが、0゚〜90゚の範囲でその根拠が明確な著書、研究、が僅少です。
一部の環境(板厚や材質などに枠を設けるなど)について、展開計算に使用されているものも見受けられますが、さらに広く環境の変化
( 材質 、板厚、 パンチRやダイV幅の変更 )にともなう移動量の明確な根拠や算出方法などが明示され、一般に公開され実用に至っている
ものは見当たりません。

現在の移動量把握方法 
 (1)四分六分法の使用
 (2)市販ソフトによるデータの使用
 (3)自社データの使用
私の経験では、いずれも現状認識のとおりで、(3) を除き、作業現場の要望に正確に応えられるものは見受けられませんでした。

現 状 認 識
角度曲げの移動量の計算について、環境の変化に応じた一貫した明確な物差し ( 計算方法 ) が無いので、設計図面にもとずき、正確な移動量を求めるという概念は無いようです。
( 設計図面毎に仕様が変わるという条件でもイレギュラー曲げを除けば何らかの物差しが作れるのではないか?と思料されますが?)
このことは、CADで展開後の部品を角度曲げ作業後に、曲げた後の外寸を金尺 ( 目視 ) やノギス(本来の精度の高い使用方法がされていない職場が多く見受けられる。)で計測、あるいは、原寸図を作成し照合する、という寸法精度の低い方法で展開長を確認し、必要があれば寸法修正をする、という逆の作業を行っていることからも理解できます。

複数の角度曲げの場合、少しの展開長誤差が複数回積み重なって、結果、大きな誤差となります。
このため、新規の製品についてCADで展開した部品材料を曲げても図面上の寸法が出ず、精度がでないため曲げた部品同士の嵌め合いが悪くなり、製品の品質に影響を及ぼす場合も生じます。

この原因は、同じ曲げ条件下においては、計算方法が相違しても、同じ量の移動量を示さなければなりませんが、展開CADの移動量計算方法(それぞれのCADメーカーが持つノウハウ)と、プレスブレーキの移動量計算方法 ( それぞれのブレーキ製造メーカーが持つノウハウ ) と自社の過去からの経験値と3者の移動量の計算方法で求める移動量に差異がある、あるいは、突き当てからパンチまでの寸法が入力値と相違している、寸法検査が正確でない、などが思料されます。

これは、各社、各自の計算根拠が各様で、その根拠が明確に示されていないので、その量も各様であることに他なりません。
そのため、展開が悪いのか、曲げ工程が悪いのか、寸法検査が悪いのか、解からず、責任の所在が不明確になりがちになります。
展開済みの部品を曲げた場合に、寸法が出ない場合(展開長に誤差がある場合)に、曲げ現場では、この対策として、V幅を変更して伸び量をかせぐ、その逆の曲げRを替える、誤差を按分する、逃げの部分を作り削る、展開寸法を変更してもらう、などがありますが、この、試し曲げと称するムダな作業に時間と労力を割かれているのが現状です。

従って、精度の高い製品の製作には、環境の変化に対応した移動量の物差しが無い以上、いかに移動量を正確に把握しているメーカーのCADを使用するか、あるいは、自社独自で長年に亘る曲げに関する資料の蓄積が必要となります。
移動量にかかわり、曲げ環境が変われば展開長がわからず、部品材料の作り直しや何度も試し曲げを余儀なくされるなど、作業現場の労働生産性を阻害している大きな要因となっています。
特に、作業現場では、誰でもが使い慣れた手元にある機材で、簡単に、迅速に、正確に与えられた図面の仕様どおりの製品が創れる各種作業に応じた物差しが必要です。

曲げ作業における事務環境の向上
数社で曲げ作業を経験しましたが、当初は、扱う機材も旧く、経験と勘に頼ったいわゆる職人技といわれる職場が多く、先輩方から長年培ったノウハウを、なかなか教えてもらえませんでした。
今日に至るまで、曲げ作業にかかわる各種機器が開発され、あるいは、コンピューターの小型化など、曲げ作業にかかわる環境も著しく変化し、作業性は格段に向上しました。

過去、作業現場の作業性の向上について、[ 目 次 ] 26 曲げ作業の効率化(帳票の規格化と共有)を参考に、パソコンによる曲げデータの帳票化と、ファイルの共有により約300種類の製品の曲げをデータ化し、誰でも簡単に取り出せるようにしました。
今後は、経験は必要ですが、経験と勘に頼った作業から誰でもどの様な曲げ作業にも対応できるよう、図面の展開、解析、計算方法、金型の選択、試し曲げや完成品の測定方法などの曲げの基本を習熟しパソコンをフルに活用した作業に移行させることが必要です。

このホームページにおける各計算機は、関数電卓の複雑な曲げ計算をパソコンによる計算に切り替え 、パソコンをフルに活用した作業に移行させることが、労働生産性の向上と相俟って品質の高い製品を生み出すことになると思料され、作成したものです。
このホームページが、読まれた方の曲げ作業に少しでも役に立ち、難しい曲げ作業にも率先して挑戦され、さらに技術研鑽を積まれる一助になれば幸いです。

曲げ作業と移動量に関する現状について 
移動量にかかわる内容は、伸び量の説明のみや、縮み量との相関について、真偽が不明、指示どおりの寸法が出ない などが現状です。
現在、曲げ作業を行なう場合の移動量 ( 一般的には外寸を表示し、伸び量と表現している )の検出方法や積算方法については、 簡単に安価に対応できるものが、高価な装置を使用したり、曲げ作業後の製品寸法の具体的な計測方法などが不明瞭なまま、あるいは、従来の方法による寸法精度の低い作業があることが思料されるなど、実用には装置に多大な経費が必要である、あるいは精度に従来技術の域を超えない内容のものもあり、広く実用 にいたっていないのが現状のようです。
また、現在、数件の特許など出願がなされていますが、出願内容の移動量は伸び量のみで、縮み量の言及に至っていません。
このホームページでは、初回から移動量の概念を伸び量と縮み量を含む概念として捕らえ、一般に公開してきました。
ここで云う移動量の概念は伸び量と縮み量を含み、移動量の把握とは各種環境に対応した正確な移動量を求めることができる概念です。
参考
下記 の 関連サイト から
重要技術の発展状況  板材の曲げ加工の技術 などにリンクをしています。

解 決 策
角度曲げの移動量について、パンチRやV幅の変化、板金材料の種類、角度の変化などの環境の変化を捕捉した算出根拠の明確な伸び量と縮み量を同時に算出する、下記のような(作業現場で使う計算機(案))現場の立場に立った使い易い方式がもとめられています。
これは移動量を求める場合、入力データに対して、伸び量と縮み量の両方が算出されるので、設計図面の表示が内寸表示、外寸表示に拘りません。
このような、環境の変化に応じた移動量が算出できる方式を物差しとして、展開計算、曲げ作業現場のP.C、あるいは、実機に搭載することによって、各セクションにおける統一した正確な移動量の把握を容易にし、 さらに、現在、公開中の各種計算機の併用により、労働生産性の向上、併せて製品の品質の向上に掛かる問題点の解決が図れると思料するものです。





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